ファシリテーターの一般的な意味は会議などの進行役ですが、語源に遡ると、「簡単(facile)にする人」を意味します。その人がいることで物事が簡単になりスムーズに運ぶ……という名脇役としての本質を意識することで、ファシリテーションを成功させるコツも自然に見えてきます。
新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、オンラインでの会議も増えつつある現代。このような状況下で、オンライン会議の進行役を務めることになったビジネス・パーソンも多くいるのではないでしょうか。しかし中には、「うまく会議をまとめられない」「参加者の発言を引き出せない」などの悩みを抱えている方もいるばずです。そこで今回は会議を上手に進行するための方法として、「ファシリテーターのコツ」をに紹介していきたいと思います。ファシリテーターの能力はビジネスの世界で大いに役立つスキルですので、この記事が皆さんの参考に少しでもなれば幸いです!
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「ファシリテーション」という言葉をご存じでしょうか。ファシリテーションとは人々の活動を支援し、舵取りを行うことを意味します。つまり人々の活動を容易にするためのサポートをファシリテーションと呼ぶのです。そして「ファシリテーター」とはファシリテーションを行う人のことを指します。
日本語としてのこの言葉は、会議の文脈で用いられるのが一般的です。会議においてファシリテーターには、会議参加者の発言を促進し、より良い意思決定を行うサポートという役割があります。ファシリテーターが優秀であれば会議はスムーズに進行し、会議から得られるアウトプットの質も高まっていくのです。
会議の進行役を務め、会議をより良い方向に導くことがファシリテーターの役目だと先ほど説明しました。多くの人はこの説明を聞いて、「ファシリテーターってリーダーのこと?」と疑問に感じたのではないでしょうか。しかしファシリテーターとリーダーの役割には、明確な違いがあります。
まずリーダーの会議における役割は、「個々の発言の吟味」です。リーダーは会社のトップであるため、個々の従業員の発言をしっかりと吟味する必要があります。もし会議の中で「会社の方針にそぐわない発言」や、「実務とかけ離れた発言」が飛び出した時には、発言を修正する責任を負うのがリーダーの役目です。一方のファシリテーターには、会議を中立的な立場から進行し、会議参加者の発言や気持ちをしっかりと汲み取ることが求められます。
一言で言えば、リーダーは引っ張り、ファシリテーターは引き出します。会議における、リーダーとファシリテーターの本質的な役割の違いをしっかり理解しておくことがファシリテーションの成功につながります。
ここまでで、ファシリテーターの果たすべき役割やリーダーとの役割の違いをお伝えしてきました。ここからは、ファシリテーションを上手に行うために必要とされるスキルを、4つ取り上げ紹介いたします。4つのスキルはすべて、会議をスムーズに進行していくためには欠かせないスキルです。1つずつ丁寧に押さえていきましょう。
ファシリテーターに求められるスキルの1つ目は、「コミュニケーションスキル」です。これは皆さんも想像に難くないかもしれません。会議の進行役を務める以上、コミュニケーション能力は欠かせないでしょう。またファシリテーターを務める上で、特に欠かせないコミュニケーションスキルが「聴く能力」です。参加者の意見をしっかりと聴くのはもちろんのこと、発言内容を的確に理解する能力も「聴く能力」の1つと言えます。加えて「訊く能力」もファシリテーションの中では、重要なコミュニケーションスキルです。参加者の発言をただ「聴く」だけではなく、さらに議論を深めるため適切な質問を「訊く」こともファシリテーターに求められるスキルと言えるでしょう。
会議のデザインスキル。良いファシリテーターなら、皆が持っているスキルです。では「会議をデザインする」とは、どのようなことを指すのでしょうか。1つには、「会議に参加している全員が積極的に発言できる空間」をデザインすることが挙げられます。発言者の話を最後までしっかりと聴き、その旨が相手に伝わる仕草やジェスチャーを心がけます。たとえば発言者の話を頷きながら聞いたり、ベストなタイミングで発言に相槌を打ったりすれば、会議参加者の発言への抵抗は減少するでしょう。また会議のデザインスキルには、「スケジュール通りに進行する」といった時間的なデザインも欠かせません。良い会議は時間通りに進行され、適切なゴールへとたどり着きます。ファシリテーターを務めるときには、「空間」と「時間」両方のデザインスキルが必要です。
ファシリテーターには、ロジカルシンキングスキルも求められます。発言者の伝えたいことを随時「ピラミッド・ストラクチャー」に落とし込み、結論や根拠を明確にする高度なスキルです。ロジカルシンキングを利用して発言内容を整理することで、会議が脱線する可能性を抑えることもできます。また会議の参加者全員に「ピラミッド・ストラクチャー」を共有させることで、より有意義に会議が進行します。ただこのスキルは、日頃よりロジカルシンキングを意識して業務を行っていない方には少し難しく感じられるでしょう。実践的なロジカルシンキングを身につけたい方は、ロジカルシンキングを詳しく解説したこちらの記事も参照してください。
合意形成スキル。ファシリテーターを務めるとき、このスキルは絶対に欠かせません。会議のゴールは、先述したように様々です。しかしいかなる会議であれ、最終的には参加者の合意の形成を図る必要があります。もしファシリテーターに合意形成スキルが備わっていなければ、多くの優れたアイデアが出され、議論が白熱したとしても、良い会議にはなりません。良い会議とは最終的にしっかりと合意形成が成され、結論を出すことのできた会議のことを指します。ファシリテーターを務める際には、異なる意見にしっかりと耳を傾けながらも、個々の意見の要点をまとめ合意形成へと会議を導いていきましょう。
ここまで読み進めてくださった方であれば、「ファシリテーターとは何なのか」ということは、おおよそ理解いただけたことでしょう。ここからはいよいよ、「良いファシリテーターになるためのコツ」について解説してきます。良いファシリテーターなくして、良い会議はありえません。ファシリテーターとしてのコツを掴み、良い会議の立役者になりましょう。そうすれば自ずと、ビジネス・パーソンとしての評価も向上していくはずです。
ファシリテーターを務めることになった時には、どうしても会議中のファシリテーションのコツや必要なスキルばかり考えてしまうかもしれません。しかし、その前にひとつ、押さえるべき重要なことがあります。それが「会議のタイプは複数ある」ということです。会議のタイプによって、会議のゴールが異なります。会議のゴールが違えば、進行を行うときに注意すべきことにも変化が生じます。まず会議の種類は大きく分けて、以下の5つです。
ファシリテーターを務めるときには、その会議がどのような種類の会議で、会議のゴール地点はどこにあるのかを意識するのが最初のコツです。ゴールが定まれば自ずと「会議のデザイン」も可能になります。このことを忘れてしまうと、会議の進行に弊害が生じ、会議の方向性を見失う恐れがあるので気をつけましょう。
ファシリテーターに何よりも求められるもの、それが「中立性」です。会議の参加者の意見は様々で、時には主張が正反対のケースもあります。そして参加者同士の議論が白熱し、感情的に意見を述べる人も出てくるかもしれません。このような状況こそファシリテーターが活躍する絶好の機会です。
良いファシリテーターは、常に客観的な立場で会議に臨むことを意識し、会議の進行を行います。感情的にならず、会議の参加者と一定の距離を保ちながら、合意形成に舵を切っていきましょう。これがファシリテーターを務めるコツの2つ目です。
ファシリテーターを務めるとき、自分の意見や主張をじっと我慢することも必要になります。黒子に徹する。これが、会議で良いファシリテーターを演じるコツの3つ目です。ファシリテーターの役割を思い出してください。「会議の進行をスムーズに行い、意思決定のサポートをすること」これが、ファシリテーターに求められる役割です。つまりサポートに徹することで初めて、真のファシリテーターとして周囲から評価を得ることができます。
黒子に徹するときのコツは、「感情を抑え、冷静であること」です。これは「客観的な立場で会議に臨む」ためにも必要になります。常に周囲の状況を把握しながら、会議のスムーズな進行に徹しましょう。
「客観的な立場で会議に臨むこと」「黒子に徹すること」これらの2つを良いファシリテーターになるコツだと紹介してきました。そしてこれらに共通することは、「自分の意見を主張しない」ということです。しかしファシリテーターも人間です。会議に参加している以上、どうしても自分の意見を言いたくなる場面もあるでしょう。そのようなときは、「質問を上手に利用する」ことがおすすめの解決策です。
発言者に対して、質問を通して自分の考えていることを間接的に伝えるイメージです。他にも上手に質問を利用することで、会議の進行をスムーズに行えるケースもあります。ファシリテーターを務めるときは、上手に質問を利用することも心掛けてみましょう。
聴き手のイメージを膨らませる。良いファシリテーターになるコツの1つとして、最後にこのことをお伝えします。参加者の発言をより会議に活かすには、発言内容を全員に分かりやすく伝えることも、「簡単にする」人であるファシリテーターの重要な役割です。
ではどうすれば、発言の内容をより参加者に伝えられるか。その答えが「聴き手のイメージを膨らませる」という方法です。「今の発言の具体例としては、○○が考えられますね」「今の主張が達成されたときのことを、想像してみてください」こんな言葉を用いて、聴き手のイメージを膨らますことが可能です。ぜひ、皆さんがファシリテーターを務めるときの参考にしてみてください。
いきなり「ファシリテーターやって」と会社の上司から言われても、多くの人はファシリテーターとしての役割を全うできないでしょう。ファシリテーターを実践で上手に務めるためには、やはり訓練を積む必要があります。そこで、訓練のための学習方法を3つ取り上げてみました。皆さんにおすすめできる順番で、ランキング形式を用いて紹介していきます。
おすすめのファシリテーター学習法第3位は、「書籍を読み込む」です。書籍であれば、明日からファシリテーターの基礎を学習することができます。またコストを削減できるのも大きな魅力の1つです。さらに書籍であれば、自分の好きな雰囲気の本を選ぶことができるので、選択の幅も広がりそうです。
逆に書籍の学習には、「基礎的な内容しか掲載されていない」というデメリットもあります。またどうしても知識だけに偏り実践につながりにくいので、堂々と実務でファシリテーターを務めるための訓練としては、少し心もとない印象を受けるでしょう。
企業に勤めるビジネス・パーソンであれば、先輩の技を盗むというのは成長の常套手段です。それは、ファシリテーターとしての能力を高めるときも同じことが言えます。ファシリテーターとしての能力が高い先輩を見つけ、その人に教えを乞いましょう。書籍での学習よりも、具体的かつ実践的なアドバイスを貰えるはずです。
しかしこの方法には、大きなデメリットがあります。それは「教えてもらえる時間が限られる」という点です。仕事のできる先輩は、常にたくさんの業務を引き受けています。自分がアドバイスして欲しいときに、必ずしもアドバイスを受けられるわけではないことを頭に置いておきましょう。
良いファシリテーターになる1番の近道は、「スクールで講座を受講すること」です。講座であれば、様々なカリキュラムが用意されておりレベルにあった学習が可能です。質問をするタイミングに気を遣うこともありません。講師の方に、必要な時に必要なだけ質問ができます。
特に、座学だけでなく実際の会議を模したトレーニングを実施している講座がおすすめです。経験を積むことができるだけでなく、実践的なアドバイスもたくさん聞くことができるでしょう。オンライン方式の講座であればオンライン会議のファシリテーション習得にも最適です。
この方法のデメリットは、他の2つの学習方法よりもコストが高く掛かること。しかし自分に対する先行投資だと考えれば、実践的な練習を行え、気兼ねなく質問でき、レベルにも合った環境はとてもおすすめの学習方法だと言えます。書籍も先輩のアドバイスも、体系的に学びながら併用すると効果が断然違いますよ。
オンライン会議でも重要な役割を果たすファシリテーター。今回はファシリテーターの概要から求められるスキル、良いファシリテーターになるためのコツ、おすすめの学習方法まで紹介してきました。良い会議には必ず、良いファシリテーターが隠れています。より優れたビジネス・パーソンとして成長していくためにも、皆さんも「良いファシリテーター」を目指してみませんか。