理想の上司になるために気を付けるべき事8選 〜開発職編〜

普段部下に対しての言動に注意していますか?「厳しくすることもあるが、部下の気持ちを考えて指導している」「昔上司から同じことをされたし、これぐらいなら大丈夫だ」と思っている方も少なくないでしょう。ですが、自分が普段部下に対して行っていることでも、実は部下にとって理不尽と感じることは意外とたくさんあるんです。また、自分が部下だった頃と今では、コンプライアンスも異なり、ちょっとしたことがパワハラ等になってしまうこともあります。

Aさんは前職でメーカーの開発職をしていましたが、上司から理不尽なことをされた経験がいくつかありました。そこで今回はAさんの実体験に基づいて、部下が思う理想の上司になるために気を付けるべき事を8個紹介していきます。

1.相手にしっかり伝わっていなければ指示を出したとは言えない

Aさんは開発職で新製品が壊れるかどうかを試験する業務を行っていました。当時、Aさんは開発職に配属されて3か月の新人。試験業務を行うにあたり、20年以上働いている上司から作業手順や試験業務をなぜ行うかなど丁寧に教えてもらいました。Aさんもしっかりとメモを取り、早速作業に取り掛かります。メモを見て間違いのないよう確認しながら作業を行います。「わからないところがあれば電話で聞いて」と言われたので別件で違う場所にいた上司に質問しました。数時間後、上司がAさんを見に来ます。現在の進捗を報告すると、「○○くん、この作業やった?」と一言。その作業について全く教えてもらってないし、取ったメモにも書いてませんでした。Aさんは素直に「言われなかったので、やってないです」と答えます。すると、上司は「言ったよ、なんでちゃんと人の話聞かないの?」と怒られました。Aさんは(言われていない…)と思いながらも、立場上反論できないし、反論しても余計面倒なことになると思い謝ることに。

このように、「言われてないのになんで怒られるの…」と思うことが多々あるようです。しっかりと指示をしていたとしても、伝わっていなければ意味がありません。指示を出した後は、部下がしっかり理解をしているかを確認するため、指示内容を復唱をさせるといった事も必要です。

2.部下に自発的に動いてほしい!仕事への理解を深められるよう話をするのが大事

先ほどの「指示をされていないのに指示したと怒られる」というのは指示していないという証拠がないですし、もしかしたらメモを忘れた場合があるためAさんにも問題があるかもしれませんよね?そこで、Aさんは今回指示されたことをメモに取り、書いたメモを上司に確認してもらい早速OKをもらいました。これでAさんのメモが証拠となり、メモ通りに作業をすれば問題ありません。早速作業に取り掛かるAさん。数時間後上司がAさんの様子を伺いに来ました。すると、「この作業した?」と前と同じ質問。Aさんも「言われてなかったので、やってないです」と同じことをいいます。そして、上司は「なんでやってないの!言ったよね?」怒鳴られました。Aさんはメモを見せて「確認してもらいましたよね?」と反論。しかし、上司は「ちゃんと確認してなかった。もっとしっかりメモを取ってよ」と滅茶苦茶なことを言いました。

もしかするとこの上司は、「言われなくても自分で考えて行動して欲しい」と思っていたのかもしれません。しかしこのような言い方では、Aさんも萎縮してしまうのもうなずけます。部下の方の多くは分からない事に対して不安が多く、失敗を恐れがあるため指示が無ければ作業をしたくありません。またこのように上司が威圧的だと容易に質問もできません。つまり仕事がただの作業になり、「言われなければやらないという環境」は、上司自身が作り出しているケースが殆どです。このような場合は、指示を言った言って無いの水掛け論をするのではなく、なぜこの作業をしなければいけないのかという事をしっかり理解してもらうまで話し合う事で、次回からは自発的に行動をしてくれるように促しましょう。

3.失敗は罪ではない

部下がミスをしたとき全責任を押し付けるというのも理不尽だと感じる行動です。これは、Aさんと同じ部署にいた新人Bさんの話。開発職の試験業務ではどの製品でも正しい試験が行われるよう慎重に準備することが必要でした。今回の仕事は、製品を試験機にセットして一定の負荷を何回加えても壊れないことを証明する試験。工数が3日で試験用の製品が1つしかないため、ミスをしたら大惨事になります。そのため、ミスのないようBさんが1つの作業を終える毎に上司が確認するという流れに。上司が厳しくチェックしてくれるため、Bさんは安心して作業ができ、なんとか準備を終わらせることができました。しかし、試験開始して3日かけても壊れない予定が1日以内で壊れてしまいます。調査したところ、予定よりも10倍大きい負荷を試験機に入力してしうという操作トラブルが原因でした。原因がわかったところで、C上司が技師に連絡をします。すると、C上司は「Bくんがミスをしたせいで試験が台無しになりました。全てBくんが原因です!」と報告。それを聞いた瞬間、Aさんは驚きました。確かにBさんが準備したのでBさんに責任があります。しかし、間違っていないかどうかを入念に確認したのはC上司。C上司にも責任があるのでは…。

Aさんのように、BくんとC上司の間に立つ、中間管理職の方は、このような経験をされた事があるのではないでしょうか?上司と部下に板挟みにされ、日々責任を負わされるプレッシャーは計りしれません。この事例のように、全ての責任を部下になすりつけてしまう方には、ある大きな勘違いをしている事が多いです。それは「失敗=罪」という考え方です。もちろん失敗はしない方が良いのですが、全て成功をさせ続けるというのは難しいです。失敗は起こり得るものと考え、「なぜ起こってしまったのか」「再発を防ぐためにどうすれば良いのか」という事を冷静に考えるようにしましょう。「誰がやったのか」なんていう事は企業成長を考えた時に、あまり大切な事ではありません。心に余裕を持ち、部下の失敗にも堂々と責任を負える人は、いつの時代も魅力的な上司像です。

4.一貫性のある上司に部下はついてくる

Aさんの会社では毎月改善提案を提出する必要がありました。行った業務改善についてA4用紙1枚にまとめて上司に報告するという業務です。同僚のDさんは最初上司から改善前と改善後どう変化したかわかりやすく短い文で書いてという指示に従って提出。ある時、改善提案を提出したとき「短い文じゃわかりにくい。これからはわかりやすければ文章は多少長くても問題ない」と再提出に。しかし、翌月提出すると「やっぱり文章を短くかいて!書き直し!」と言われ、結局元々の指示に戻ります。このような指示変更がDさんの在籍していた2年間で3回あり、毎回時間を奪われて苦しんでいたそうです。

このような問題は開発職に限らず、他の様々な業種でも耳にしますね。単に上司の方が気分屋ということもあったりするのですが、基本的には業務に追われて自分の指示をした事を忘れてしまっているという事が多いです。ここでの問題は、Dさんが「昨日仰っていた内容と違います」という事が言い出せない環境になってしまっている事です。おそらくそんな意見を言ってもねじ伏せられてしまうのがオチだと思っているからです。自分が出した指示を忘れてしまうのは仕方が無い事ですが、一貫性をもって指示するのも大事です。もし指示を出した後に部下が不満そうな表情をしていたら、しっかりと理由を聞いてあげましょう。もし自分が間違っているならば、上司から素直に謝るという勇気も必要です。

5.人によって態度を変えない

Eさんの上司は誰からも「仕事ができない」と評判で過去に色々な部署にたらい回しされた過去があります。そんな上司は自分より仕事ができる部下に対しては腰が低くなります。部下に仕事を頼んだ時に、部下が「その指示はおかしいですよ」と指摘しても、しっかりと話を聞いて指示を修正します。しかし、仕事ができない部下や新入社員には攻撃的で、おかしいと指摘されると怒鳴って反論することが多かったです。また、指摘されたことでカッとなり、頼まれた仕事を終わらせて報告したときに重箱の隅をつつくような指摘(報告資料の写真の位置が微妙に左に寄りすぎているからやり直しなど)を受けました。

人によって態度を変える人は簡単に信用を失います。今特別扱いされている部下も、いつ自分に対する態度が変わってしまうのかドキドキしているものです。このような上司は、周りを気にし過ぎている方が多いです。みんなの人気者である部下には嫌われたく無いので、謙虚な姿勢を示します。逆にみんなの評価が低い部下には強く当たる事で、自己顕示欲を満たそうとしているのです。このような事は癖になってしまっているため、すぐに直していくというのは難しいですが、これを続けていても部下との関係性は強くならず、最終的には誰もついてきてくれなくなってしまいます。この事を日々意識をしながら少しずつ改善していきましょう。

6.できる限り部下の意見を優先する

Fさんは同部署の先輩と試験に必要な部品を選ぶ作業をカタログを用いて行っていました。2人で話し合っていると、上司が間に入ってきて「どう?ちゃんとできてる?」と聞いてきます。先輩は「はい。今回試験で相応しいのはどれか考えています」と返答。上司は「この試験では条件的にこの部品がいいんじゃない?」と助言をしてくれました。先輩が「それもいいですね。自分はこの条件であればこの部品もいいと思うんですよ。」と部品の載ったカタログに指をさします。先輩が提示したのはほぼ同等品で両方とも今回の試験には適合な部品。しかし、上司は「いや、俺が選んだ方が絶対いい。これを買おう」と決めつけます。先輩は「まぁどちらでも問題ないので僕らで決めて買います」と返すと、「もうこれでいいだろ!早くこれ買いなさい!」と強い口調で意見を押し付けてきました。

このような事はプライドの高い方に多いかと思います。自分の思い通りにしてくれないと、敵対心を抱いているのではないかと考えてしまいます。冒頭にも説明しましたが、部下に自発的に動いてもらうためには、部下の意見を信用してあげるということが大切です。大きな問題に繋がってしまいそうな場合は除き、今回のようにどちらでも良いという場合は少しでも部下の意見を優先してあげるようにしましょう。この小さな積み重ねが、数年後には部下からの大きな信頼へとなります。

7.愚痴は信用を落とす最大の要因

ある日、上司が技師に怒られたためイライラしていました。そして部下のGさんに向かって「あいつ本当に腹立つ」と怒りをあらわにします。立て続けに「○○をこの手順でやりますと言ったら、◆◆と△△を指摘受けて別にそこは関係ないだろ…」など先ほど技師と揉めたことについて話します。人の話を聞かないと怒る上司だったので作業を中断することに。それから、上司は技師とあった過去のトラブルや愚痴を20分ほどしゃべり続けます。ようやく終わったと思うと、上司は満足したようにその場を立ち去りました。

本人がいないところで悪口をいうという事は、大きく信用を失う事になります。愚痴を聞かされている部下は「別のところでは私の悪口も言っているのではないか」と考えるからです。これは仕事に関わらず、信用されたいと思っている相手には愚痴を言わない事をオススメします。どうしても話したい時には、当人に全く関連性のない家族や友人などに聞いてもらうのが良いです。

8.飲み会や忘年会などは自由参加に

最後はどの業界でもよくある飲み会の問題。Aさんの部署では年に5回と決して多くはないため、頻度に関しては問題ありません。後輩のIくんは飲み会が好きだったのでできるだけ毎回参加しようと思っていました。しかし、1度だけどうしても予定があったのでやむを得ず欠席。すると、飲み会当日の金曜日、飲み会好きの他の先輩たちから「なんで今日来ないんだ。チームなんだから行くのは当たり前だろ」と怒られました。翌週の月曜日にも「行かないの本当に最低だぞ。次は絶対行けよ!」と2回目の説教を受けることに。同様に、忘年会も強制参加という風習がありました。参加料金が2万円とかなり高く、中には行きたがらない人もいます。しかし忘年会前日までに、最低1日1回は「忘年会来いよ!」と勧誘されます。参加しなかった人は忘年会の前後の期間は業務でも少し不当な扱いを受けていました。会社のイベントに行かないだけでこれだけ嫌な思いをしなければならないのは本当に理不尽だと感じました。

今の時代、飲み会や忘年会の強制参加はパワハラに該当する可能性があり、各社注意を促していますよね。とはいえ毎回飲み会に参加してくる部下は、コミュニケーションが深まり、気に入られやすいというのも事実です。そんな中、飲み会などに参加をしたくないと思っている人達の味方になってくれる上司が一人でもいると、毎回辛いと感じている部下には信頼を得る事ができますね。家庭の事情や金銭面など、参加に悩む部下もいると思います。その場合、欠席できるようにさりげなくフォローしてあげたり、参加しない人が悪者にならないような声かけをしてあげましょう。会社の風潮が飲みニケーションを推進している状況であればあるほど、非参加勢からの人気票を集めやすいのではないでしょうか?

理想の上司とは、部下の思っている事を理解できる上司

いかがでしたでしょうか?このように、自分では正しく伝えているつもりでも、部下や後輩の方は辛い思いをしている事が多いものです。もし今のマネジメントが上手く行って無いと感じるのであれば、それはコミュニケーションに問題があるのかも知れません。一度ご自身のやり方が正しいのかを確認してみましょう。セミナーに行っても良いですし、参考書も買っても良いと思いますが、やはり対面で判断をしてもらえる学習スクールがおすすめです。この記事を読んで頂いた上司の方に、少しでも社内の雰囲気を良くしようと考えて頂くきっかけになって頂ければ幸いです。