営業はヒアリング力で成果を出す!6つのポイントと6つのコツ

営業における商談の基本的なフローは、大まかに以下の通りです。

  • 作成したリストを元に顧客にアプローチ
  • アポを取り訪問
  • ヒアリング
  • ヒアリングをもとに提案
  • クロージング(契約)

この流れにおいて、ヒアリングが最も重要なプロセスであると言っても過言ではありません。なぜなら、きちんとヒアリングし顧客の真のニーズを深掘りできるかが、次の提案の内容やクロージングを左右し、その結果が成約に結びつくからです。つまり、ヒアリング能力こそが成約を左右するスキルだということです。

そこでこの記事では、成約を目指す営業が押さえておくべきヒアリングのコツをご紹介します。どの業種の営業でも、顧客に納得していただいたうえで契約を結ぶことは、成果に結び付くだけでなくさらに先の仕事へもつながる重要なことです。ヒアリングで躓いてしまうと、顧客の真の課題や悩みを解決することは難しくなってしまいますよね。

逆に言えば、ヒアリングさえうまく行けば、クロージングまでの道筋は用意されているも同然です。営業力を高める最大のポイントはヒアリングにあると考えることもできます。では、良いヒアリングとは具体的にどのようなものなのでしょうか? この記事では、営業のヒアリングの実践的なコツを詳しく紹介します。

営業におけるヒアリングとは

なぜ営業でヒアリングが重要なのか

まずは営業におけるヒアリングの意義や重要性から考えてみましょう。結論から言うと、ヒアリング力はお客様によりよい提案をするために必要な能力です。現在の国内市場には、様々なモノやサービスが溢れていますよね。顧客側が苦労せずサービスを知り選べる時代において、売り手は新たな販売ルートやサービスを模索し続けています。そんな時代に、紋切り型の営業をしても、当然顧客には響かないでしょう。求められているのは、顧客の真の課題や問題を解決できる配慮の行き届いた提案です。

顧客から「自社の課題をよくわかってくれている営業だ」「これまで悩んでいた問題の解決方法を分かりやすく説明できる営業だ」と信頼を勝ち取ることができれば、自ずと成約に向かうことは想像に難くないですよね。そのためには、正しく顧客のニーズを掴むことが重要です。要するに、顧客の期待を超える提案をするための情報集めのスキルがヒアリングなのです。

営業ヒアリングのための事前準備

営業におけるヒアリングのコツの前に、商談の際の前提条件をおさらいしておきましょう。前提として、相手も聞かれたこと全てに本音で答えてくれるわけではありません。それはあなたが、好きな上司とそうでない上司に質問をされたときにも同じことが言えると思います。事前の身だしなみや言葉遣い、名刺の渡し方の段階から、相手はあなたのことを注意深く見ています。顧客から率直な意見や情報を教えてもらうためには、鏡に映った自分自身を客観的に見ることもまた重要なスキルです。

また、もうひとつの前提として、顧客の業界や顧客の競合についても十分に調べておきましょう。後述しますが、ヒアリングの目的は仮説を立てて質問により検証していくことにあります。ヒアリングを受ける顧客の立場で考えたとき、的外れな質問を繰り返す営業のことをどう思うでしょうか? 「本当は業界に興味はなくただ契約だけを取りに来ている営業なのではないか」と不信感を抱きますよね。そんな営業からモノやサービスを買おうと思うでしょうか?

具体的には、競合の名前や社数、その業種が何年も取り組んでいる課題や問題は何か、関連した法律や時事、などなど、業界の周辺知識を吸収しておくことが望ましいです。近年では各種SNSやメディアもあるため、その業界に勤めている人の声を直接集めることもできますよね。こうした情報をしっかり押さえておくことが、顧客から信頼を勝ち得る営業となる第一歩となります。商談の時にも「他社と比べてどうか」「時世柄なにが求められているのか」など、付随情報を加えることでより説得力を持たせることができるようになります。身だしなみと同じように、言葉もあなたの印象を決める重要なポイントなのです。前提を押さえたところで、上手いヒアリングとは何か、考えていきましょう。

営業ヒアリングで押さえるべき6つのポイント

顧客との商談の機会は基本的に一度きりで、そう何度もヒアリングの機会が頂けるわけではありませんよね。聞き漏らしがないように、押さえておくべき質問事項を6つのポイントにまとめました。ご自身のヒアリングの際に各項目が聞けていたかを確認して、そうでない項目があれば意識して聞きだすように努めましょう。こうした項目を事前にヒアリングシートにまとめておくのがベストです。

ポイント1:現状把握

まずは、営業をかける顧客の現状を把握しましょう。例えば、その事業を継続している年数や、社員や部署の人数などによっても抱えている悩みは様々です。事前にホームページなどの広報情報で確認できる情報を押さえたうえで、より踏み込んだ状況や態勢を顧客から聞き出していきます。いきなり踏み込んだ内容を聞くのではなく、世間話のように一般論から入りましょう。これによって双方の緊張も解け、商談の雰囲気作りができます。

ポイント2:課題・問題・ストレス

現在顧客が置かれている状況を把握できたら、それによってどんなストレスを感じ、何を課題や問題としているのか仮説を立てます。この仮説を元に、顧客に実際の課題やストレスについて質問してみましょう。自分が想像した課題や問題と、現場にどれほどギャップがあるのか知ることが重要です。このすり合わせを丁寧に行うことで、終盤に行う提案がソリッドになります。

ポイント3:スケジュールと緊急性

ここまでで引き出した問題解決の緊急性を探りましょう。例えば、法や制度改正に伴って浮上した課題や問題の場合は緊急度が高く迅速な対応が要求されます。「いずれ上場するに際し……」というような場合は、スケジュールにも余裕が生まれます。顧客の温度感を理解することは、信頼関係を深めるうえでも重要なポイントです。自社の納期とも密接に関わってくるポイントですので、必ずスケジュールと緊急性は確認するようにしましょう。

ポイント4:予算

顧客が問題解決に際し、どれくらいの予算を持っているかも提案するうえで重要な情報です。とはいえ「予算はいくらですか」などとストレートに質問しすぎても警戒心を抱かれてしまいますよね。例えば

「例年は○○にどれくらいの予算を割くことが多いですか?」
「目安となる金額はありますか?」

などと婉曲に一般論として質問すると、話の流れとして自然に予算感を引き出すことができます。事前に伺ったスケジュールや緊急性を加味して、提案の内容を絞り込みましょう。

ポイント5:決済までの流れとキーパーソン

特にBtoBの場合、その場ですぐに成約とはならない場合も多くあります。そういった場合には、営業交渉を円滑に進めて機会を取り逃さないよう、顧客側の決済の流れ、責任者、関連部署なども合わせて確認しておきましょう。

ポイント6:商材への疑問や懸念、反応など

この項目は主に、提案後に顧客からフィードバックを受ける場合のポイントになります。仮に導入が決まったとしても、顧客の側に疑問や懸念があるかは必ず確認した方が良いでしょう。前述のスケジュールはもちろん、契約後のアフターケアやサポート対応にも関わってくる部分ですので、可能なら営業部門だけでなくサポート部署にも合わせて伝えておくとトラブルが起きづらくなります。また、契約の背景、商談の際の反応なども合わせて伝えておくと、万が一営業の担当者が替わった際にもスムーズに引継ぎができるでしょう。

営業ヒアリングを確実に進める3つのテクニック

ここまでは営業のヒアリングで引き出すべき基本的な項目を紹介してきました。それでは、前述の6つのポイントを実際にはどのような表現や切り口で質問すべきなのでしょうか? ここでは3つの重要なテクニックを紹介します。きっと新たな気付きが得られると思います。

4W2H

  1. What:何を求めているのか。何に困っているのか。何を改善したいのか。
  2. Who:誰が使うのか。誰が決めるのか。
  3. When:いつ必要なのか。いつ実行するのか。期間はどれくらいか。
  4. Where:どこで必要なのか。どこに求められているのか。
  5. How:どのように活用するのか。
  6. How much:いくらで解決したいのか。

前述の営業ヒアリング項目にも織り込まれている基本情報です。営業でヒアリングを行う際には常に意識して、聞き漏らさないように注意しましょう。自分が今なにを聞き出そうとしているのかを4W2Hの観点から正確に把握することで、円滑にヒアリングを進めることができます。

BANT

BANTとは、それぞれ次の頭文字です。

  1. Budget:予算
  2. Authority:決裁権限
  3. Needs:顧客、企業、組織のニーズ
  4. Timeframe:導入時期

こちらも営業ヒアリングシートの要綱に含まれているものです。4W2Hとも重なり合うのですが、4W2Hでは提案のためにヒアリングする内容全般を網羅するのに対し、BANTは主に営業のクロージングを想定して確認することが多い項目です。BANTを正確に把握することで具体的な提案が可能となります。

SPIN

BANT同様、SPINも以下の4つのキーワードの頭文字を取ったものです。

  1. Situation:状況を確認する質問
  2. Problem:問題を明らかにする質問
  3. Implication:問題の重要性を示唆する質問
  4. Need payoff:解決後の理想の状態をイメージさせる質問

こちらも前述の営業ヒアリングシートに盛り込まれている内容ですね。重要なのは、自分がする質問が、どの意図を持った質問なのかを常に意識することです。1~4までの間で、少しずつ質問が抽象的→具体的になっていることに気が付きましたか? そう、営業におけるヒアリングにはただ聞き出すだけでなく、顧客の意識を行動・成約へと自然に動かす役割があるのです。クロージングに際して、少しずつ導入イメージを抱いてもらえるように、一つ一つの質問の意図を明確にしましょう。

では、実務でこれらを活かすために、どのような姿勢でヒアリングに挑むべきでしょうか? ヒアリングのコツを紹介します。

営業ヒアリングを成功させる6つのコツ

コツ1:話しやすいようアイスブレイク

相手に安心感を持ってもらうことも営業の重要な事前準備の一つ。営業としては提案したいことや説明したいことは多数あると思いますが、いきなり売り込みをするのはNGです。時事ニュースやホットな話題などから、話しやすい雰囲気づくりをしましょう。顧客がどんな話題に興味を持っているか、ここで反応を見ておくと、質問にも活かせますね。

コツ2:話すことではなく聞くこと

契約は顧客の納得と同意があってこそです。そのためには、営業が顧客の課題をしっかり把握し、それを解決するための提案をする必要があります。そう思うと、ついつい話をしたくなる気持ちも分かりますが、主役はあくまでも顧客です。だからスピーキングではなくヒアリングなのです。もしこれまで担当した別の顧客と同じ問題を持っていたとしても口を挟まず、まずは顧客の話に耳と心を傾けながら注意深くヒアリングしましょう。親しみのある表情と相槌は、話しやすい営業という印象を顧客に持ってもらうために重要です。

コツ3:主語は自分ではなく相手

ヒアリングの際に気をつけたいのが、お客様を直接誘導しようとしないことです。例えば自社のサービスの提案をするときに、「弊社のサービスを使えば……」と話してしまいがちです。同じ意味を伝えるなら「御社がお困りの問題を解決するには……」とした方が、売りつけられるのではないかという抵抗感は少ないですよね。主役は顧客であるということを忘れずに、ニーズに寄り添う言い方・聞き方を心がけましょう。

コツ4:ポジティブな回答が得られる質問をする

話を前に進めるためには、顧客の納得と肯定が必要です。もしも商談でネガティブな会話ばかりが繰り返されたとしたら、その商談で契約を取るのはやはり難しいでしょう。特に予算などの話をする際は、「その金額ではちょっと……」というやり取りも珍しくありません。その時に「そうですか……」と返してしまうと話が終わってしまいますよね。例えば、「どれくらいの予算でお考えでしたか?」などと、どうすれば実現できるかを考える質問をしましょう。こうすることで、商談自体が未来の話をする雰囲気になるだけではなく、クライアントが抱える別の悩みを引き出せる可能性もあります。

コツ5:未来がイメージできるように質問する

営業において重要なのは商品の詳細なスペックの説明ではなく、それを得ることでどんな未来(変化の恩恵)があるかを伝えることです。コツ4とも関連しますが、契約は常に未来をより良くするために行われるものです。顧客が今抱えている課題や問題の改善後のイメージを持てるような質問を心がけましょう。他社事例や具体的なデータなどを盛り込み質問したり、質問に回答したりできると、「もしも自社でもそれを行った場合……」と未来を想像してもらいやすいかも知れません。先述のSPINを十分に意識してヒアリングしましょう。

コツ6:仮説を立てながら質問する

繰り返しになりますが、ヒアリングはより良い提案のために行うものです。情報を得るための質問ももちろん重要ですが、「こうした場合はいかがですか?」というように問題の解決イメージを探る提案質問も同じくらい重要です。こういった質問をすることで「実は以前その案は試したのですが~」というように、通常の質問だけでは得られない情報を教えてもらえることもあります。顧客の課題や問題を解決するための仮説を立て質問することは、検証と同じ効果があるのです。

まとめ

営業ヒアリングで顧客に与えるべき印象

営業におけるヒアリングの目的は的確な提案と信頼の獲得であることは前述しました。限られた時間のなかではありますが、顧客の課題や悩みをできるだけ多く教えてもらい、有効な提案につなげましょう。顧客から「この営業なら解決できるかもしれない」「この営業に話を聞いて欲しい」と思われる営業とはつまり、信頼を勝ち得た営業に他なりません。

あなたはどんな人を信頼できる人だと思いますか? 自分の考える「信頼できる人」のイメージを持つことで、顧客への事前調査の質や、質問の内容も自ずと変化してきます。事前に業界について徹底的に調査することが、顧客から信頼できる営業だと思ってもらうための第一歩です。

繰り返しになりますが、顧客は身だしなみだけでなく、表情や相槌、質問の内容や言葉選びなど様々な情報で、あなたが信頼できる営業かを見極めようとしています。意図が分からない質問や、的外れな質問は顧客からの信頼をかえって失ってしまいかねません。事前調査が活きるように、事前に何を、どう質問すべきかをよく考えておくことが、契約を頂ける営業となるための布石になるのです。

コミュニケーションスキルを磨きましょう

とはいえ、客観的に自分を見ることは難しいですよね。顧客からどう見られているか? 与えたい印象と実際の立ち居振る舞いにギャップがないかどうかということは、営業の現場だけでなく、日常生活でのコミュニケーションでも練習することができます。日頃会話をする家族や友人、上司や同僚などと会話をする時に、上記のようなことを意識してみましょう。そして、コミュニケーションスキルが向上しているのかを判断するのは自分ではなく話し相手です。「コミュニケーションに自信がない」「自分のコミュニケーションレベルがわからない」という方は、一度スクールで確認してみてはいかがでしょうか?

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